2021/07/13 06:52

皆さんのなかに、こんな症状に悩まされている方はいませんか?

「食べると、すぐ眠くなってしまう」
「最近、胃腸が弱っている気がする」
「疲れやすくなった」
「何もする気が起きなくなったり、イライラしたり、気分の変化が激しい」
いろいろな原因が考えられますが、もしかしたら、あなたのその症状は、「食べすぎ」からきているかもしれません。しかも、1日3食、規則正しく食事をとるだけで、「食べすぎ」になってしまう可能性もあるのです。

「食生活に関する世論調査」(NHK、2016年)によると、1日平均3食とる人の割合は、16~29歳では70%程度、60代は85%以上、70歳以上になると90%を超えています。

「1日3食」という習慣は、私たちの生活に、これほどまでに深く浸透しています。しかしながら、「1日3食が理想的である」という考え方には、実は、確固たる裏付けはありません。

それどころか、1日3回の食事は、体や健康にさまざまなダメージを与えているのです。

1日3食の弊害として、まず最初に挙げられるのは、「内臓が休む時間がない」ことです。

食事は「食べたものが喉を通過したら終わり」ではありません。体の中では、各臓器が一生懸命働いています。内蔵にとってはむしろ、食べものが喉を通過してからが、「食事」の本番です。

食べものが消化されるまで、胃の中に滞在する時間は平均2~3時間、脂肪分の多いものだと、4~5時間程度といわれています。小腸は、胃から送られてきた消化物を5~8時間かけて分解し、水分と栄養分の8割を吸収します。大腸は、小腸で吸収されなかった水分を15~20時間かけて吸収します。

忘れられがちなのが、肝臓です。肝臓は働き者です。体に入ってきた栄養を必要なエネルギーに変えたり、余分なエネルギーを蓄えたり、食べものに含まれるアルコールやアンモニアなどの毒素を処理したり、脂肪の消化吸収を助ける胆汁をつくったりします。

1日3回食事をとると、朝食から昼食までの間隔は4~5時間、昼食から夕食までは6~7時間程度しかありません。これでは、前の食事で食べたものが、まだ胃や小腸に残っているあいだに、次の食べものが運ばれてきます。

当然、胃腸は、つねに消化活動をしなければならなくなります。肝臓もフル回転で働かなければなりません。胃腸も肝臓も、休む間もなく働き続け、どんどん疲弊していってしまうのです。

胃腸が疲れ、消化機能が衰えると、栄養素をきちんと吸収できない、老廃物を排出できない、免疫力が低下するなど、さまざまな問題が生じます。スポーツのあと休憩をとるのと同じように、内臓にも休息が必要なのです。

1日3食の弊害としては、「内臓が休む時間がない」ことのほかに、「食べすぎを招きやすい」ことも挙げられます。

例えば、「前の食事が高カロリーだったため、今は体があまりエネルギーを必要としていない」というとき、決まった時間に食べることが習慣化していると、「今、空腹かどうか」「体がエネルギーを必要としているか」といったこととは関係なく食事をとってしまい、結果的に「食べすぎ」になってしまうことが多いのです。

しかも、胃には伸縮性があり、食べた量に合わせて膨らんでいきます。普段から慢性的に食べすぎている人の場合、「胃が膨らんでいる状態」が当たり前になっていて、「本来、体が必要としている量」以上の食べものも、どんどん受け入れてしまいます。

「食べすぎ」は、体にさまざまな影響をもたらします。「食べすぎ」の弊害には主なものだけでも、次のようなものが挙げられます。

・消化する時間とエネルギーが必要になり、胃腸や肝臓に負担がかかる。
・体内の活性酸素が増える。
・血液中の栄養分が過剰になり、血液や血管の状態が悪くなる。
・脂肪が過剰に増えると、悪玉ホルモンの分泌が増える。
・疲れやだるさの原因になる。
・糖尿病、高脂血症、脳出血、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、がんなどの原因になる。
・糖質の取りすぎが、肥満や「脂肪肝」の原因になる。
・糖質の取りすぎで血糖値が急上昇し、食後の眠気、だるさ、イライラなどの症状が表れる。
・血糖値が高い状態が続くと、2型糖尿病の発症につながる。

1日3食の習慣には、「内臓が休む時間がない」「食べすぎを招きやすい」といった弊害があり、体にさまざまなダメージを与えているということをお話ししました。では、こうしたダメージから体を守るには、いったいどうしたらよいのでしょう。

食事のカロリー数を減らす? 糖質を減らす? いいえ、私がおすすめしたいのは、「空腹の時間を作る」というものです。16時間以上、空腹の時間を作ると、最大の効果が得られます。

「○や△は食べてはいけない」といった細かいルールや、面倒なカロリー計算はいっさい必要ありません。空腹の時間以外は、何を食べていただいてもかまいませんし、空腹の時間中にどうしてもお腹が空いたときも、ナッツ類などであれば、いくら食べていただいてもかまいません。

16時間以上の空腹の時間を作るのも、睡眠時間をうまく組み込めば、無理なく実行できるでしょう。本書には、生活スタイルに合わせて空腹時間を作るヒントなども載せています。どうぞ参考にしてください。

空腹の時間のあいだ、体に何が起きているのかをお話ししましょう。私が「16時間」という時間にこだわる理由も、ここにあります。

まとまった空腹の時間を作ると、まず、内臓の働きがよくなります。胃腸や肝臓を十分に休ませてあげることで、内臓の疲れがリセットされます。また、空腹によって一時的に栄養が足りなくなると、活性酸素を除去する抗酸化酵素が増え、「活性酸素の量が減る」ともいわれています。

最後にものを食べてから10時間ほど経つと、体内で「脂肪の分解」が始まります。空腹の時間が長くなればなるほど、体内の脂肪が分解されていきます。脂肪が分解されると、血液中の脂質が減り、圧迫されていた血管が解放されます。

そして、12~24時間、空腹の時間を作ると、血液中の糖質も20%程度低下するといわれています。

しかし、空腹が体にもたらす最大のメリットは、なんといっても「オートファジー」にあります。最後にものを食べてから16時間が経過したころ、体の中でオートファジーが機能し始めるのです。

オートファジーとは、「細胞内の古くなったタンパク質が、新しく作り替えられる」仕組みのことをいいます。

私たちの体は、普段、食べたものから栄養を摂取し、必要なタンパク質を作っているのですが、なんらかの原因で栄養が入ってこなくなると、体は生存するために、なんとか「体内にあるもの」でタンパク質を作ろうとします。

そこで、古くなったり壊れたりした、細胞内のタンパク質を集め、分解し、それらをもとに新しいタンパク質を作るのです。

さらに、細胞内の「ミトコンドリア」という小器官も、オートファジーによって新たに生まれ変わります。新しく元気なミトコンドリアが細胞内にたくさんあればあるほど、細胞の活動に必要なエネルギーが得られ、若々しく、健康でいられます。

つまり、オートファジーとは、「古くなった細胞を、内側から新しく生まれ変わらせる」仕組みだといえます。2016年、東京工業大学の大隅良典栄誉教授が、オートファジーの研究でノーベル生理学・医学賞を受賞しました。オートファジーは今、世界中の注目を集めています。

このように、16時間の空腹の時間を作ることで、

・内臓の疲れがとれて、内臓機能が高まり、免疫力もアップする。
・血糖値が下がって、インスリンの適切な分泌が促され、血管障害が改善される。
・脂肪が分解され、肥満が引き起こすさまざまな問題が改善される。
・細胞が生まれ変わり、体の不調や老化の進行が改善される。

といった、さまざまな効果が期待できます。

「空腹」は、1日3食の習慣や食べすぎが体に与えたダメージをリセットし、体を内側から蘇らせてくれます。まさに、空腹こそが最強のクスリなのです。


行動を後押しするブログ【hidedonblog】