2021/07/03 08:45

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ひでどん(@komatu00713)です。

サステナビリティ経営には、規制などの外圧に対処するための「外発的対応」と、サステナビリティの重要性を理解して自ら進める「内発的対応」がある。外発的対応は「①インシデント型」と「②外部要請型」に分けられ、内発的対応は「③未来志向型」と「④ミッション・ドリブン型」に分けられる。世界の趨勢から内発的対応の重要性がますます高まっている。

①インシデント型
何か大きな事件(インシデント)をきっかけに、企業のあり方が変化する型のこと。インシデントとは、タンカー事故による重油流出、児童労働の発覚、環境NGOからの環境汚染への抗議や糾弾などのことで、こうした出来事がマスコミなどで大きく報道されると、企業価値が大きく損なわれる。遭遇した企業は、すでに顕在化してしまったリスクに「超短期的」にダメージを最小限に食い止める対応をとろうとする。

②外部要請型
政府・地域、投資家、消費者、従業員などの重要なステークホルダーの要請を受けて、環境や社会的な課題に対して受け身的に変化せざるをえないと考えて動く型のこと。多くの日本企業の現状は、この外部要請型に当てはまるだろう。

本音としては「できることなら何もしたくない」ので、外部からの圧力に対してはミニマムのコストでブランドの価値が下がるリスクを抑えよう、というスタンスだ。外部要請型は、環境・社会をめぐる長期的変化への対応ではなく、何もしないと近い将来、外部から批判されるのでそのリスクを抑えることに注力する。インシデント型よりは時間軸が少し長いものの、「リスク」に対して「短期的」に対応している点では共通している。

③未来志向型
環境・社会を含む外部環境の長期的変化や、それによって引き起こされるリスクと機会を理解したうえで、企業の事業全体を新しい変化に適応させていこうとする型のこと。「時間軸が長い」点に加え、リスクだけでなく「機会」を理解している点が、外発的対応の二つの型とは大きく違う。また、リスクも「外部から非難されるリスク」ではなく、「環境・社会の毀損に伴う事業継続に関わるリスク」を理解している点も大きく異なる。

実は、外発的対応の事例のなかには、外部から「機会」の開示を求められて統合報告書などに「社会課題を起点とする機会」を記述している企業もあるが、このタイプとは明らかに異なる。未来志向型の企業は、長期的な視点で環境・社会の動向を考慮し、自ら先頭に立って、能動的、主体的にサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)を推進する。

例えば、オランダの化学企業DSMは、もともと国営の石炭採掘企業としてスタートしたが、時代とともにつねに進化しながら現在は飼料やサプリなどの栄養・食品、衣料用素材、低環境負荷のプラスチックや樹脂などを製造するライフサイエンス・マテリアルサイエンスカンパニーにビジネスを変革してきた。

④ミッション・ドリブン型
内発的対応の一つだが、未来志向型の延長線上にあるものではない。その企業が掲げるミッション・ビジョンそのものが「環境・社会に関わる課題の解決」であり、企業トップが「このような社会の課題を解決したい」という強い信念を持ち、トップの(時にカリスマ的な)リーダーシップを原動力に、事業を推進している型のことだ。

例えば、創業時のミッション・ビジョンに、アメリカの電気自動車大手のテスラは「できるだけ早く大衆市場に高性能な電気自動車を導入することで、持続可能な輸送手段の台頭を加速する」、植物由来の人工肉などを製造・開発するインポッシブル・フーズは、「動物から食料をつくる必要をなくすことにより、世界の食料システムを真に持続可能なものにする」を掲げた。

ここまで説明した4つの型のなかでは、「④ミッション・ドリブン型」がサステナビリティ経営の実現には最も理想的だ。しかし、創業からの長い歴史を持つ多くの大企業は、事業ポートフォリオがバラエティーに富み、数多くのステークホルダーとの関係がある。そのため、大胆に事業を変え、「ミッション最優先」に経営の舵を切っていくことは現実的に難しい。

サステナビリティ経営の4つの型を紹介してきたが、企業は「①インシデント型」から「②外部要請型」または「③未来志向型」へ、もしくは「②外部要請型」から「③未来志向型」へと、変化していくことが多い。

例えば、インシデントによる株価の下落や、不買運動で売り上げが減少した企業の中には、その後、環境・社会問題の重要性を認識し、今では「③未来志向型」の企業として業界をリードする企業となった例も少なくない。

これからの新しい時代に力強く成長しようと思うなら、外発的な「やらされサステナビリティ経営」からいち早く脱却し、自分たちの意志による「③未来志向型」のサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)への移行が不可欠だ。

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