2021/05/30 08:20


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ひでどん(@komatu00713)です。

大豆を原料にした大豆ミートなど「代替肉」と呼ばれる新たな“食肉”の形が注目を集めている。新型コロナウイルス感染拡大による健康志向の高まりを背景にスーパーなどでの取り扱いが増加しているほか、安定的な食品供給の重要性が再認識される中で、ベンチャー企業による商品開発も相次ぐ。政府は代替肉のような商品を可能にする食の先端技術「フードテック」を成長分野と位置付けており、国際的なルール作りの主導も期待される。

 高層マンションが立ち並ぶ新興住宅地にあるイオン東雲店(東京都江東区)。1階の食品売り場に昨年3月からお目見えしたのは、大豆由来の「大豆ミート」を使用した商品などを集めた専用コーナー。並ぶのは自主企画商品を含めた約10品目で、主婦や帰宅途中の会社員らが足を止める。

 イオンは全国の約2000店舗で植物由来食品の自主企画商品「トップバリュベジティブ」を本格展開。昨年10月から今年2月までに計画比3割増を超える売り上げを達成した。3月17日には料理の材料に使えるひき肉タイプの「大豆からつくったミンチ」を発売、今後の商品拡充を視野に入れる。

 担当者は「もともと関心が高まっていたが、最近は特にカロリーを気にする人が手に取っている印象」と手応えを口にする。

 コンビニエンスストアでもセブン&アイ・ホールディングスやファミリーマートなどが昨年から今年にかけて大豆ミートを使ったハンバーガーなどの品ぞろえを順次強化している。ドトールコーヒーも昨年、全粒粉入りのパンで大豆ミートのハンバーグを挟んだ商品を発売した。

■外出自粛で健康志向

 大豆ミートのように、食肉と同じような味や食感を目指した加工食品の総称を「代替肉」と呼ぶ。タンパク質を多く含む一方、食肉に比べて低カロリーで、健康や宗教上の理由で肉を食べない菜食主義者らの間で広まっていたが、新型コロナ感染拡大が始まった昨年から注目度が高まった。

 背景の一つには、外出自粛の拡大に伴う健康志向の広がりがある。明治安田生命保険の調査では、約半数が新型コロナ禍で「健康への意識が高まった」と回答。うち過半数が「食事・栄養に気を配るようになった」とする。

 加えて、米国の食肉工場で昨春、従業員の新型コロナ感染が相次ぎ、食肉の供給が滞ったことで安定供給への不安が顕在化した。さらに世界的な人口急増と新興国の経済成長で、タンパク質の需要急増も見込まれる中、代替肉は持続可能な食料供給を実現するシステムの一つとしても関心が高まっている。

 日本総合研究所創発戦略センターの三輪泰史エクスパートは「自宅で食事をする機会が増え、原材料に対する視線が変わった。食料安全保障面でも輸入の多い食肉への依存度を下げようとの動きが出ている」と分析する。

■国際ルール主導狙う

 代替肉の普及を技術面でサポートするフードテックも存在感を高め、ベンチャー企業が食味と栄養価を両立させた代替肉の開発を競う。DAIZ(ダイズ、熊本市中央区)が開発した大豆原料の代替肉は、独自技術で大豆特有の臭みをなくしたのが特長で、ハンバーガーチェーンのフレッシュネスバーガーが採用するなど実用段階に入る。

 また徳島大学発のグリラス(徳島県鳴門市)は完全室内飼育のコオロギを粉末状にした、タンパク質が豊富な「コオロギパウダー」を開発。このパウダーを使った非常備蓄用のパンを販売している。エリー(東京都中野区)も、蚕を粉末状に加工したものを原料にしたスナック菓子やスープなどを開発した。

 代替肉は食品の海外依存度が高い日本にとって、食料安全保障に寄与するだけでなく、国際的に評価の高い日本食文化との融合次第では、日本の強みとなる可能性を秘める。代替肉の品質基準などを定めた国際ルールは未整備で、ルール整備を主導できれば、日本企業の海外進出を後押しできる可能性が高まる。

 このため農林水産省は昨年、フードテックに関する研究会を立ち上げた。中間報告では、民間投資を活性化させるための環境整備の必要性や、代替肉などをめぐる国際ルールへの戦略的な関与など研究会で議論された課題を取りまとめた。

 野村総合研究所の佐野啓介上級コンサルタントは「商品の利益率が低い食品業界の課題はコスト面にある。商品開発のための新規投資や効率化のための企業間連携について、政府も後押ししていく必要がある」と話している。

■2040年には市場シェア6割に

 世界的なタンパク質需要の増加への対応策として期待される代替肉は将来的な市場拡大が予想されている。米コンサルティング会社のA・T・カーニーは、すでに普及が始まっている大豆など植物に由来する代替肉に、将来的な成長が見込まれる動物の細胞を使った培養肉も加えれば、2040年には食肉市場の約6割が新しいタイプの食肉で占められると予測している。

 日本財団が昨年10月に行った17~19歳の1000人を対象にした意識調査では、フードテックに可能性を感じると回答した人が全体の38・6%に達した。

 フードテックに対する投資額も拡大の一途をたどる。農林水産省によると、世界のフードテック分野への投資額は12年の2344億円から18年には2兆円超に達し、今後も拡大が見込まれている。

 ただ日本の投資額は諸外国と比較して、少ないままだ。大手商社の丸紅はDAIZに1億円出資。ダイズが原料の大豆を安定調達できるようにするほか、国内販売や米国進出を支援するなどの動きを見せるが、全体では米国や中国などの後塵(こうじん)を拝している。

情報ソース 産経新聞


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