2021/02/24 06:40

 

 

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ひでどん(@komatu00713)です。

日本の教育機関をめぐる「教育IT国取り合戦」の“勝者”がグーグルであることが現実味を帯びてきた。

グーグルは2月18日未明(日本時間)にオンラインイベント「Learning with Google」を開催した。その日本向けの説明会の中で、Google for Education アジア太平洋地域 マーケティング統括本部長 スチュアート・ミラー氏は「GIGA スクール対象となる区市町村の自治体のうち半数がG Suite for Educationを選び、GIGAスクール対象となる自治体の半数近くがChromebookを選んでいる」と述べた。この発表は、衝撃と言っていい。

パンデミックが急進させた教育DXの最新状況

元々グーグルは、米国の教育市場で強い存在感を持っていたが、日本では率直に言ってマイクロソフトの独壇場だった。その風景を大きく変えたのが、2020年来の新型コロナウイルスの感染拡大と、リモート授業の増加、そして文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」だ。

2020年度中に一人一台を実現する追加予算が国会で認められて予算化され、各地の教育委員会がデバイスの選定に入り、すでに選定を終えている教育委員会もあるなど、まさに最終段階を迎えている。

こうした教育DXは日本だけでなく、全世界で急速に進みつつある。

Google for Education ディレクター、 ジョン・ヴァンヴァキティス氏によると、「弊社が学校向けに提供しているClassroom(筆者注G Suite for Educationの一部として提供されている学級管理機能)は、従来4000万のユーザーに使っていただいていた。が、この1年で1億6千万ユーザーへと増えた」という。

わずか1年でユーザー数が4倍になったというのは「爆発的な増加」だ。この追い風によって、今やグーグルの教育関連のソリューションは元々強かった米国市場だけでなく、グローバルに注目され、活用されるようになってきている。

Chromebook「2020年中に181万台予想」に現実味

興味深いのは、2020年2月の時点では、マイクロソフトは教育市場での自社のシェアは85%だと説明していたことだ。

この1年、GIGAスクールという新しい変化の中で、その半分をグーグルが獲ったのなら、当然残りの半分をマイクロソフトやアップルなどが分け合う形になる(厳密に言うと、グーグル/マイクロソフト両方のサービスを導入する自治体もあると考えられるため、単純に半数とはならない可能性もある)。

実は2020年後半に、シェア急拡大の予兆はあった。

グーグルがGIGAスクール向けのデバイス市場で大きくシェアを伸ばしていることは、すでに2020年の段階で明らかになっていた。MM総研が2020年の10月に発表した発表したデータによると、2018年末の段階において国内で稼働しているChromebookの台数は9.5万台だったが、2019年には24.5万台に。そしてMM総研の予測では、2020年末には、181.6万台へと急速に増える見通しだという。

MM総研によるChromebookの出荷台数予想

MM総研が2020年10月に発表した調査「国内Chromebookの市場規模調査」。GIGAスクール構想の後押しで、Chromebookの稼働台数が急増するという予想になっている。

それらの多くはGIGAスクール構想向けと考えられる。ノートPC市場全体におけるChromebookのシェアも2019年の1%から2020年は13%、さらに2021年には24%に達するなど大幅に増えるとMM総研では予想している。

グーグルのミラー氏は「Chromebookの採用も順調に進んでおり、既にGIGAスクール対象自治体の半数近くがChromebookの導入を決めている」と言う。このコメントも、MM総研の予測を裏付けるものだと言える。

最新のChromebook

Chromebookは製造するPCメーカーも増えている、シャープ傘下のDynabookも参入を明らかに。

MM総研の予想やグーグル自身が明らかにした数字から明白に言える事は、冒頭にも書いたが、「GIGAスクールの明白な勝者はグーグル」だろうということだ。

GIGAスクールの教育向けのクラウドサービスで半数の契約を獲得し、同じくChromebookに関しても大きな成長を実現した。ここで大事なのは、デバイスはいくらでも乗り換えられるが、クラウドサービスの乗り換えがかなり面倒だということ。乗り換えは不可能ではないが、専任のIT担当者がいない地方自治体の教育委員会が、そんな面倒を乗り越えてG Suiteからマイクロソフト 365に(あるいはその逆を)するとは、筆者には思えない。

つまり、小中学校向けの市場シェアはこれで固定される可能性が高い。今回グーグルがGIGAスクールで大きく市場シェアを伸ばした状態が今後も固定されるということであり、例えば国が独自のクラウドサービスを小中学校に共通で提供する、などの変化が起きない限り、しばらくはこの状態が続くということだ。

その点でもグーグルにとっては大きな意味がある勝利だ。

新名称を含めた「3つの新発表」

新しいブランドとしてGoogle Workspace for Educationを発表。

グーグルは今回のイベントで3つの新しい発表を行なった。

グーグルの教育向けサービスのブランド名の変更
新しいプランの導入
新しいクラウドストレージポリシーの導入
以上の3つだ。

1. 新ブランド名は「Google Workspace for Education」
新しい教育向けのサービス名称は「Google Workspace for Education」。これまでは「G Suite for Education」という名称で呼ばれてきたが、既に企業向けの同様のサービスが「G Suite」から「Google Workspace」に変更されたのに合わせてGoogle Workspace for Educationという新しいブランド名が導入される。

2. 新料金は「月額30円」など選択肢が増える

また、従来は無料プラン(G Suite for Education、今回からGoogle Workspace for Education Fundamentalsに名称が変更される)と有償プラン(G Suite Enterprise for Education、今回からGoogle Workspace for Education Plus)だけだったプランに、新たに2つのプランを追加する。

具体的にはセキュリティツールとデータ分析機能を追加する生徒向け有料プラン(月額30円/ユーザー)と、Google Meetの拡大機能とリポート機能の無制限利用をセットにした教師向けの有料プラン(月額480円/ユーザー)が追加される。プランを増やすことで、より多くのユーザーニーズに対応するのが狙いだ。

3. 新しいストレージポリシーは「無制限」撤廃

そして、新しいストレージポリシーでは、各ドメイン(ドメインの単位が学校単位か教育委員会単位かは組織による)ごとに、100TBというクラウドストレージが使える共有ストレージモデルを提供する。

これまで教育向けには無制限でストレージが提供されてきたが、新たに「組織全体で100TBまで」という制限が導入されることになる。こうしたクラウドストレージのポリシー変更も、企業向けのGoogle Workspaceにおいて先行で導入されてきたことで、今後も無償ないしは低価格でサービスの提供を続けるための決断だと考えられる。

新規ユーザーには2022年1月から、既存のユーザーには2022年7月から適用される予定だ。そのほかにも、Classroom機能やGoogle Meet、Chromebookなどにも機能強化が加えられる。

こうした攻めの姿勢を取ることでグーグルはさらに教育市場での攻勢を強める方針だ。その先に見据えるのは、むろんビジネス市場や大学などで強力な市場を持っている、マイクロソフトとのさらなる競争であることは言うまでもないだろう。

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